史実を元にした韓国映画「王の涙 イ・サンの決断(역린)」
안녕하세요?
oulmoonです。
今回は先日観た韓国映画のご紹介です!
王の涙 イ・サンの決断(역린)
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#945135
原題/The Fatal Encounter
公開日:
韓国:2014年4月30日
上映時間:137分
ジャンル:歴史劇、時代劇
監督 : イ・ジェギュ
出演 :
ヒョンビン:李朝第22代王イ・サン
チョン・ジェヨン:サンチェク(カプス)
チョ・ジョンソク:サルス(ウルス)
ハン・ジミン:英祖の後妃・貞純王后
パク・ソンウン:近衛隊長ホン・グギョン
チョン・ウンチェ:ナイン(ウォレ)
他
TOHOシネマズ池袋で8/3より上映予定
「王の涙 イ・サンの決断」上映スケジュール・上映時間(池袋) → ★
正祖(Wikipedia) → ★
역린(ナムウィキ) → ★
王の涙 -イ・サンの決断-(KBSWord) → ★
※もう終わっていますが参考に
【概要】
若き王を最も偉大な王へと変えた、運命の24時間とは?
朝鮮王朝時代の中でも名君の誉れ高い李朝第22代王、イ・サン。
1777年7月28日、実際に彼を狙った暗殺計画“丁酉逆変”をもとに、謎多き歴史の内幕に迫る超一級エンターテイメント!
日本でも「シークレット・ガーデン」、「愛の不時着」などで大人気のヒョンビンを主演に迎え、李朝時代の名君として有名なイ・サン暗殺未遂事件に隠された男たちの絆
を描く感動の歴史ドラマ。
暗殺の脅威にさらされる若き王が、自身に放たれた刺客と対峙することで真の王として目覚めるきっかけとなった運命の24時間を描いている。
監督は、テレビドラマ「チェオクの剣」などの演出で高い評価を受けてきたイ・ジェギュ。
『ホームランが聞こえた夏』などのチョン・ジェヨンが悲しき宿命を背負った宦官(かんがん)を好演。
陰謀の行方はもとより、兵役除隊後初主演を飾ったヒョンビンの体を張った熱演にも目を奪われる。
【あらすじ】
宮廷内の最大派閥である老論派の陰謀により、幼い時に父を殺され、25歳で祖父から王位を継いだ李王朝第22代目国王イ・サン(ヒョンビン)。
1777年7月28日、即位から1年を迎えたイ・サンは、常に暗殺の脅威にさらされていた。
心休まるときがないイ・サンは老論派の排除に動きだすが、対する老論派は先王の後妃で若く美しい貞純王后(ハン・ジミン)が後ろ盾となり、イ・サンを追い詰めていく。
そんな敵ばかりの宮廷内で、イ・サンが唯一心を許せるのは宦官のカプス(チョン・ジェヨン)だけだったが……。
やがて明らかになる、カプスの秘められた悲しい過去。
果たして王の運命は?
【感想】
たった24時間で起きたこととは思えない濃厚さ!
前回の映画紹介で記事をのせた「王の運命」と繋がるお話です。
実はこちらの方を先に観ようかと思っていたのですが、時代的に「王の運命」のお話の方が先のことだと知って観る順番を変えました。
そのお陰で関係性が分かっていたので、それぞれの立場などもすんなり理解できました。
王様といえど人間。
いや、王様だからこそ、庶民には分からぬ不安と恐怖に日々脅かされ、感情が不安定になったり、長いものに巻かれて名ばかりの王である人が多かったのかもしれません。
朝鮮王朝時代随一の名君と名高い正祖も、若かりし頃はそんな王の一人でした。
父を殺されたことを恨みつつも、政治への影響を考えて、父の仇となる者たちを処罰できないでいました。
この物語は、そんな彼が王としての覚悟を決め、名君として歩む一歩となったきっかけを描いています。
構造としては、暗殺未遂の直前から24時間前をスタートとして事件を追っていく、緊張感ある流れになっています。
王やその味方たち、王を狙う者たちがそれぞれどのように動いていったのか。
また、合間に登場人物たちの過去のエピソードも交えられ、それぞれの立場や思いが重なって、より物語を感情的に彩っています。
そのせいか、たった1日で起きたこととは思えないほど濃い内容に感じられました。
何十年もかけて繋がってきたそれぞれの人間関係が、あの事件に集約されていたから当然といえば当然かもしれませんが…。
そのくせスピード感もあるので、2時間はあっという間でした。
やはり韓国映画は、フィクションが加えてあるとはいえ、歴史物でも背景・設定などしっかりと脚本が練られている上に、驚きの演出や名優たちの迫真の演技も相まって、観客を引き付ける度合いがすごいなと感じました。
全部が全部そうでないとしても…。
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#948737
役者も文句なし!
主役は王様なのですが、彼の物語と平行して、彼の宦官であるカプスや、殺し屋のウルス(チョ・ジョンソク)の物語も主役級に引き込まれました。
まずは主役のヒョンビンさん。
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#945110
この作品が海兵隊除隊後の最初の作品だってので、序盤に出てくるシックスパックの美しい姿は納得ですし、この前観た「共助」での格闘シーンからもアクションシーンもしっかりこなせる役者さんだということは知っていました。
そう知っていたにも関わらず、剣さばきは舞を踊るように優雅で、弓をいる姿は毎回精悍で一部の狂いもなく、とても美しく引き込まれました。
また、感情の演技力も素敵でした。
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#952986
基本的には「静けさと陰」で怒りを表現し、最高潮の場面で爆発する感じ。
近衛隊長が父の仇を撃つべきだと進言しても淡々と自分が実行すると説明するシーンや、カプスに過去について質問を続けるシーン、またラストで祖母と交渉するシーンが、ヒョンビンの演じる王を印象的付けていました。
父を殺されて以来、奥底に怒りを保ちつつも国にとってよき王であるためにたゆまず研鑽してきたイ・サン。
それがこの24時間に起きた事件によって、個人の怒りを越えて王としての決意と覚悟を改めて深く濃く自分の根底に張り巡らせた感じがよく伝わってきました。
唯一残念だったのは、ラストの義兄弟対決が圧倒的すぎてちょっとヒョンビンさんの印象が薄くなっちゃったことかな。
そして、王が唯一信頼する宦官サンチェク(カプス)役にチョン・ジェヨンさん。
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#952987
この方、見た目も個人的には好きな役者さんです。(韓国の名優と呼ばれるおじさまたちは、皆さん味があって大体好きなんですけどね。)
このチョン・ジェヨンさんの演技力も素晴らしいの一言でした。
幼少の頃の面影は全くなく、途中まで仕事の出きる落ち着いた宦官にしか見えなかったのに…。
過去が出てからラストまでの彼の感情の表現力も素晴らしいし、アクションも役柄的にさすがでした。
彼の役は幼少の頃から冷たいようで面倒見がよく、優しい人物でしたが、彼の持つ悲しみと覚悟が各シーンでしっかりと伝わってきました。
具体的にいいシーンとかあげたいんですが、ネタバレになるのでグッと我慢です。
観ていない方には是非観てほしいので!
王の命を狙うウルス役はチョ・ジョンソクさん。
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#952988
朝鮮随一と呼ばれた殺し屋で、確かにその実力はすごいのですが、一人の女性を思う姿に人間らしさも感じられて良かったです。
ただ、ウルスと恋人の出会いから親しくなるまでが、個人的には若干はしょられているようで「あれ?」と思う部分もありましたが…。
まぁ、そこは物語的に大事な要素でありつつも、メインに比べたら削られても仕方ない気がするのでしょうがない。
これまで観てきた彼の役とは異なり、暗く「根」を背負った役柄ではありましたが、義兄弟での対決シーンでは本当にお見事でした。
アクションもそうですが、殺し屋として鬼のような形相で戦っていた彼が、事実を知って人に戻った瞬間…。
もうその時には手遅れだと知りながらも、「もう少しどこかで道が変わっていれば」と、思わずにはいられませんでした。
ラストはどうなるか分かっていても、そのシーンのそれぞれが持つ感情にせつなく胸を痛めました。
他にも、脇を固める役者さんたちが名優揃いです。
ハン・ジミンさんはドラマ版「イ・サン」では後に王の側室となるヒロイン役を演じているようですが、この映画版では敵役となる貞純王后役で登場しています。
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#952759
「朝鮮名探偵 トリカブトの秘密」でもそうでしたが、これまでの清純なイメージとは異なる姿を熱演しています。
つい、パク・ソンウンさんが出てくると「どんな悪い役だ?」とワクワクしてしまうのですが、今回は王に誠実に使える役柄でした。
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#930564
でもそれはそれで嬉しい。
癖のある役が多い人が、いい人役だと妙に嬉しくなっちゃいませんか?
また、子役の女の子の演技力も大人に負けず、心を揺さぶられます。
(写真提供元)https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=78861#954493
この辺の層の厚さが、さすが韓国映画と言わずにはおれません。
タイトルが気になる
邦題は「王の涙 イ・サンの決断」となっていますが、本国のタイトルは「逆鱗(역린[영닌])」。
意味を知っていれば、絶対こっちのほうが良かった!
「新感染」とか「パラサイト」とか、邦題にすると無駄にひねったタイトルにしてることが多いのが残念です。
ちなみに、「逆鱗」とは、「(龍)」の81枚の鱗のうち、あごの下に1枚だけ逆さに生えるとされる鱗」のことです。
龍は昔から皇帝(君主)を象徴ししているため、逆鱗は「皇帝(君主)の弱点」をも意味します。
そのため「逆鳞にふれる」とは、君主の怒りを指す言葉で「目上の人の激怒を買う行為を示す」という意味で一般的にも使われています。
本来の意味では龍のあごに逆さまに出たの鱗という中国の戦国時代の法家思想家韓非子が自分の本「韓非子」の「説難(ぜいなん)」篇で君主を臣下が説得することの困難さについて述べた以下のくだりにあります。
白文
夫龍之爲蟲也 柔可狎而騎也 然其喉下有逆鱗徑尺 若人有嬰之者 則必殺人 人主亦有 逆鱗 說者能無嬰人主之逆鱗 則幾矣書下し
夫(そ)れ龍の蟲(むし)たるや、柔(じゅう)なるときは狎(な)れて騎(の)るべきなり。然(しか)れども其(そ)の喉下(こうか)に逆鱗の径尺(けいしゃく)あり、若(も)し人之(これ)に嬰(ふ)るる者有らば、則(すなわ)ち必ず人を殺す。人主(じんしゅ)も亦(ま)た逆鱗有り。説者(ぜいしゃ)能(よ)く人主の逆鱗に嬰るること無くんば、則ち幾(ち)かからん。大意
龍という生きものは、穏やかな時には、馴染めば(背中に)またがる事もできるものだ。しかし、竜の喉元には鱗が逆さに生えた部分があり、これに触れる者がいると、(竜は怒り)その者をすぐに間違いなく殺してしまう。君主にも同じように逆鱗がある。(臣下の)発言者は、(具申の際に)自ら君主の逆鱗に触れるようなことがなければ、(上手くいく結果が)近いものである。
詳しくはこちら
「逆鱗」(Wikipedia) → ★
君主に進言をするといって、この逆鱗をむやみに口にだしてはならないものであり、そのような行動もしてはいけないということを指しています。
映画のタイトルとなっている「逆鱗」は龍の鱗に触れた者は、必ず殺されてしまうという意味で反逆を夢見る者たちを懲罰するという象徴的な意味も持っています。
ね?
映画の内容を知っている人ならすぐに納得されると思いますが、この意味を考えると、絶対原題の方が奥が深いタイトルですよね。
はー、もどかしい!
今の自分について振り返らせる王の姿勢
まぁ、逆にいえば大きく気になる部分はこれくらいかも。
24時間という限られた時間内で、主要人物の人間性を浮かび上がらせながらうまくまとめている演出も素晴らしいし。
宮廷内の権力争いを王はどのようにして鎮め、そして王の権力を取り戻してゆくのか是非観て頂きたいお薦め映画です。
最後に、作品の序盤とラストに出てくる「中庸」の第23章を載せておきます。
これは、イ・サンが王として目指していた物事すべてへの姿勢を表す言葉で、この映画の核になるものです。
小事を軽んじず 至誠を尽くせ
小事に至誠を尽くせば 誠となる
誠あるものは にじみ出る
表れれば いよいよ著しく
著しければ感動を呼ぶ
感動は変化を起こす
変化は万物を生育する
天下において 至誠を尽くす者のみが
己と世を変えることができる
この言葉のあとに、彼のラストのセリフ
変わる。
誠を尽くし、たゆまず歩み続ければ
この世は必ず変わる。
特に「天下において 至誠を尽くす者のみが
己と世を変えることができる」の部分は、国のトップ、政治家、そして私自身も、深く心に刻むべき言葉だと思います。
では、長くなりましたが、今回はここまで!
今日も見てくださって、ありがとうございます!
また次回の更新でお会いしましょう