안녕하세요?
oulmoonです。
今回は最近見た韓国映画のご紹介です。
先日、「こんな時期だからこそ楽しい映画を!」的な感じで「王様の事件帖」をご紹介しましたよね。
それなのに・・・今回は真逆を行く映画をご紹介してしまいます
だって・・・つい観ちゃったんですもの。
たまたまCSの番組表を見ていて、タイトルが気になったけど暗そうな感じだったので録画しないことにしたんです。
なのに・・・出演者が出演者だったので心のどこかで気になっていたんでしょうね。
たまたまその放送時間ぼーっとしながらチャンネルをポンポン変えていたら、この作品でピタッと手が止まってしまったんです。
「もし恐かったらやめよう」と思いつつ見始めたら、思った通り暗いのに、思った通り恐いのに、思った通り残酷なのに・・・出演者たちのあまりの演技力とその内容に最後まで目が離せませんでした。
「わかっていてもはまってしまう」そんな表現がぴったりの韓国映画です。
では、改めて詳細などネタバレない程度に書いていきます!
かなりヘビーだが一見の価値あり!「コインロッカーの女」
(https://eiga.com/movie/83239/より引用)
原題:차이나타운
英題:Coinlocker Girl
監督・脚本:ハン・ジュニ
【キャスト】
母(マ・ウヒ):キム・ヘス
イリョン:キム・ゴウン
ウゴン:オム・テグ
パク・ソッキョン:パク・ボゴム
チド:コ・ギョンピョ
ソン:イ・スギョン
ホンジュ:チョ・ヒョンチョル …他
上映時間:110分
韓国公開:2015年4月29日
日本公開:2016年2月16日
ジャンル:韓国ノワール、サスペンス、ミステリー
※今までも何度も出てきている言葉ですが、「ノワール」はフランス語で黒、暗黒、犯罪や闇社会を意味します
R-18指定作品
・オフィシャルHP → ★
・韓国のWikipedia → ★
・Daum → ★
・アジアドラマチックTVで2020/5/30に放送予定 → ★
차이나타운(2015) (ナムウィキ)より、予告編を2つ
▼티저 예고편
▼메인 예고편
【概要】
脚本家のハン・ジュニの長編映画初監督作品。
ドラマ「トッケビ」や映画「その怪物」で人気の若手女優キム・ゴウンとドラマ「オフィスの女王」、「シグナル」や映画「10人の泥棒たち」などで韓国を代表する大女優キム・ヘスがW主演。
その他、人気俳優のパク・ボゴムやコ・ギョンピョ等、豪華キャストが共演している。
カンヌ国際映画祭国際批評家週間招待作品、韓国2大映画祭の青龍映画賞主演女優賞・新人監督賞ノミネート&大鐘映画祭主演女優賞・新人監督賞ノミネート等、各国の映画祭で大絶賛された作品。
韓国・仁川の暗黒街で生きる女たちの血塗られた愛憎が渦巻く衝撃のサスペンスドラマ。
【あらすじ】
地下鉄のコインロッカー10番に、生まれた直後にへその緒もついたまま捨てられた女の子の赤ん坊。
「10」という意味からイリョンと名づけられた彼女は、仁川のチャイナタウンを牛耳る「母さん(キム・ヘス)」と呼ばれる冷酷無比な女に育てられる。
「母さん」はイリョンのような身寄りのない子どもを引き取っては組織の一員にし、放火や殺人など手段を問わず金を取り立てさせる闇金業を営んでいた。
やがて大人になったイリョン(キム・ゴウン)は、「母さん」の右腕として一切の感情を捨てて命令を忠実にこなす日々を送る。
そんなある日、父の多額の借金を背負わされた青年ソッキョン(パク・ボゴム)の元へ取り立てに行ったイリョン。
彼女は不幸な身の上でも前向きに生きている純粋なソッキョンに惹かれていき、これまでの生活とは違う別世界の味を初めて知る。
しかし借金を回収できないと判断した「母さん」は、ソッキョンの臓器を密売するため、イリョンに彼の殺害を命じて・・・。
【感想】
もう・・・圧巻の一言でした。その内容にも、出演者たちの演技力にも。
前述したとおり、予想通り暗くて残酷なシーンが満載でありながらどうしても観てしまう・・・そんな作品です。
特に主演の二人がすごい!
まず、「母さん」ことマ・ウヒを演じるキム・ヘスさん。
(https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=85844#1011384より引用)
韓国ドラマや映画をお好きな方なら言わずと知れた大女優さんですが、彼女のカリスマ性が爆発していました。
あえて化粧っけのないキャラクターにしていたようですが、そのそばかすだらけでたるんだ容姿に人としての美しささえ感じてしまう。
それは彼女がたまにテレビなどで見せる、歯切れのいい口調からにじみ出る知性や、明るく快活な姿から感じる華やかな魅力とはまた異なる美しさです。
その理由を考えるに、ウヒの無表情で冷酷無比、一見何を考えているのかもわからない怖さからくる迫力とオーラからきているのではないでしょうか。
2015年にKSTYLEで彼女がこの作品のインタビューに答えていたもを読んだのですが、彼女は特に役作りの段階を楽しんだと語っています。
ウヒという女性が生きていく中で経験したことを見た目で感じられるよう徹底的に作り上げたと彼女は)って言われていました。
一般的な「中年女性」というイメージではなく、外見で年齢やは性別が推察できないような、道で偶然に会ったら目が合うだけで圧倒される人になることを望んだそうです。
そのため本当はスポーツ刈りにしたかったそうですが、当時シャンプーのCMを撮っていたので断念したそう。
でもヘアメイクの担当が彼女の要望をぴったり叶える男物のかつらを用意してくれ、余計にテンションが上がってワクワクしたと。なんだか可愛い(ちなみにそのかつらを用意したのはパク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』を担当したヘアメイクさんですって。
(https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=85844#1011385より引用)
また、彼女は不健康そうにみえるよう持病に高血圧や高脂血症、糖尿病などがありそうな女性に見えるようにしたかったとも。
そのため体重も少し増やしつつ、下半身をもう少し太く見せるために重ね着したり保護服を着てお尻が大きく見えるようにしたとか。
観た人が「キム・ヘスが太ってるふりをしてる」と感じるのではなく、骨盤が広がって完全に太った身体に見せたかったそうです。
確かに、映像の中の彼女の体はとても自然に「不健康さ」をだしていました。
そしてそんな体型になっても、足の長さがすごくて「さすが」と思ってしまいましたけども(笑)
見た目もそうですが、ウヒの心情やそこからくる言動の作り方もすごいなと感じました。
ウヒはイルヨンへの特別な愛情表現として「自分の組織を維持するために強制し、統制し、懲らしめる」という方法をとっていました。
他の人に対しても冷酷なのは同じですが、血のつながらない家族としてこれからも彼女との縁と命を繋いでいくために敢えてそんな方法をとっていたように思います。
あるシーンで放つ「力を抜けば痛くない」というセリフ。
私も聞いていてたまらなく悲しくなりました。
そういえば別のインタビューでハン・ジュニ監督が話していたのですが、彼女へ最初にオファーした際は「脚本が残忍すぎる」という理由で出演を断られたとか。
その後、監督の複数回の説得で出演を快諾してくれましたが、演じながら「残酷な心の持ち主かと思っていたけれど、とても悲しい気持ちがする」と言われたそうです。
なぜなら、彼女は初めて台本を見たとき「世の中に必要のない人間なんていない。必要性の有無を、誰がどんな根拠でなぜ判断して生きていかなければならないだろう?
それぞれのやり方で熱心に生きていくだけなのに。」と。
「この作品に登場する家族は捨てられた人間があるきっかけによって『家族』という形になっているが、ここで生き残るためには必要な人間であることを証明しろと言われる。
これは単純に残酷なものではなく、悲しくて胸の痛いことだと思った」と。
その思いをウヒ自身の生き方活かしたからこそ、あの一見何を考えているのか分からない言動に真実味が出ている気もします。
そして、最後にウヒがイルヨンに残した書類。
ネタバレに関わるので書きませんが、これもまた彼女らしい愛情表現だったように思います。
インタビュー記事をがっつり読んでしまったので、キム・ヘスさんのことばかり書いてますが、もう一人の主演キム・ゴウンさんも素晴らしい演技を見せています。
(https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=85844#1015490より引用)
ウヒの存在感がすごいため、「右腕」ではありながらも若干見劣りするように感じるイルヨンですが、まだ若いからこその不安定さや儚さを見事に演じています。
特にソッキョンに出会ってからの変化がとても魅力的です。
今まで出会ったことのない温かい感情に触れ、生まれて初めての感情に戸惑いつつも徐々に受け入れようとしていく姿は、これまで育ってきた環境の異様さと10代の女性としての可愛らしさをしっかりと表現していました。
そして徐々にウヒを超えようとしていく姿も上手く描かれているので、ラストの彼女の姿にも説得力がありました。
それにしても、毎回混乱するのがキム・ゴウンさんとパク・ソダムさん。
二人とも大好きな女優さんですが、たまにどちらがどちらだったか混乱することが。
今回も一瞬「パラサイトの人だっけ?」と迷いました。
あ!主役のことばかり熱く語っていますが、脇役の皆さんもすごいんです。(毎回映画を紹介するごとに言っているセリフではありますが(笑))
ベテラン勢はもちろんのこと、若手俳優が皆さん粒ぞろい!
(https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=85844#1012631より引用)
パク・ボゴムさんは説明不要だともいますが、その純情そうな雰囲気は「応答せよ1988」にも通じるものがありました。
だからこそ、話の展開になかなかの衝撃を受けましたけども。
(https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=85844#1012632より引用)
衝撃といえば、同じく「応答せよ1988」に出演していたコ・ギョンピョさん。
彼の場合は全く正反対の役柄でしたが、こうも変われるものかと感心しました。
こちらも中々の衝撃を与えてくれましたが、役柄に没頭して見ていたのである意味納得の最後でした。
(https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=85844#1012630より引用)
不器用ながらもイルヨンを見守る兄役だったオム・テグさんは、どこかでみたなとおもったら、この映画の数日前に観た「ベテラン」にも出演されてた!
どちらもめっちゃ格闘技が強そうで寡黙な性格ですが、今後もいろんな作品で活躍されそうな予感がします。
ちなみに実のお兄さんはは映画監督のオム・テファさんだそう。
でも中でも衝撃だったのは知的障害がある役のチョ・ヒョンチョルさん。
(https://movie.daum.net/moviedb/photoviewer?id=85844#1019647より引用)
役作りが上手すぎて、彼がイルヨンを追い詰めるシーンを見る度にあまりの怖さに震えました。
出ている人たち全員がその役を完璧に理解しているからこそ、「怖いと分かっていても目が離せない」とトイレに行くのも忘れて集中して観てしまいました。
最後に、韓国では「家族」という言葉には、「血の繋がった家族」の意味のほかに、シック(食口)という「一緒に食事をする人たち」の意味もあります。
▼ファミリー全員集合
(https://eiga.com/movie/83239/gallery/5/より引用)
ほら!よく家族や知人との挨拶でも「ご飯食べた?」と聞きますよね。
それくらい彼らは「食事」と「生きること」をリンクさせているように思います。
この作品で頻繁に食事のシーンが出てくるのですが、ウヒは基本的に出前で子どもに食べさせています。
その微妙さが、彼らのいびつな関係性を上手に表している気がします。
そして、ソッキョンは初対面なのにイルヨンに手料理を振まう姿が「異なる世界」をより印象付けていると感じました。
貧しさとか裏社会とか愛憎劇とか・・・「これぞ韓国映画!」と思わせる内容でもあり、「ノワール」というだけあってラストはやはり切ないですが、ほかの作品と違うのはどこか未来に光を感じる点です。
だからこそ、私も余計に紹介したくなったのかもしれません。
残酷なシーンは多々ありますが、それでも見て損はない映画だと思います。
今回はいつも以上に長々と書いてしましましたが、興味のある方は是非!
では、今回はここまで!
今日も見てくださって、ありがとうございます!
また次回の更新でお会いしましょう