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ドラマ、映画

韓国映画「声もなく(原題:소리도 없이)」を観ました!

投稿日:2022年2月23日 更新日:

その「ねじれた関係」の結末に、あなたの善悪の境界線は…

 

안녕하세요?

oulmoon입니다.

 

 

今回は、1月下旬ににみた韓国映画のご紹介です。

この作品は、前々から気になっていた作品でした。

韓国では2020年10月に公開されたのですが、日本ではようやくといった感じです。

 

色んな思いがあってまとめられているか正直分かりませんが、とりあえずご紹介していきます!

 

 

 

韓国映画「声もなく」

 

(画像元)https://movie.daum.net/moviedb/main?movieId=133189

(以外、すべての画像元)https://movie.daum.net/moviedb/main?movieId=133189

https://koemonaku.com/

 

 

原題:소리도 없이

韓国公開日:2020年10月15日

日本公開日:2022年1月21日

ジャンル:サスペンス、クライム、ドラマ

監督:ホン・ウィジョン

キャスト:ユ・アイン、ユ・ジェミョン、ムン・スン他

上映時間:99分

韓国観客数:403,530명

日本観客数:2022年02月現在公開中

15歳以上観覧可(韓国)

 

 

 

▼参考にどうぞ

 

「声もなく」オフィシャルサイト

 

“소리도 없이 – 나무위키”

 

“소리도 없이 – 위키백과”

 

Daun “소리도 없이 | 다음영화”

 

 

 

【概要】

 

闇の仕事を請け負う口のきけない青年と、両親に身代金を払ってもらえない孤独な少女の交流を描いた韓国発のサスペンスドラマ。

 

テインを演じるのは、「バーニング 劇場版」のユ・アイン。
韓国屈指のスター俳優のユ・アインが新人監督の低予算オリジナル脚本作品への出演したというだけでも大きな話題を呼んだが、更に本作の一切セリフがないという難役に体重を15kg増量して挑み、ベテラン俳優たちをおさえ2021年の青龍賞主演男優賞および百想芸術大賞最優秀演技賞、アジア・フィルム・アワード最優秀主演男優賞を受賞した。

 

相棒役には「梨泰院クラス」の悪役が記憶に新しいユ・ジェミョン。
作品ごとに異なる印象を与える千の顔をもつ俳優だ。
本作では、犯罪組織の清掃員でありながら誰よりも誠実で信仰深いチャンボクを演じ、物語の重心を担っている。

 

監督は82年生まれの新人ホン・ウィジョン。
2018年の釜山国際映画祭で、SF短編映画『Habitat』で注目を集める以前に、2016年にベネチア映画祭の「ビエンナーレ・カレッジ・シネマプログラム」で12本のうちの1本として選出された脚本段階で注目され、本作で長編デビュー。

 

犯罪映画の常識を覆すユニークな演出と個性的なキャラクター描写で、切なさとアイロニーの入り混じる全く新しい映画を作り上げ、初長編にして、韓国で最も権威のある青龍賞新人監督賞と、韓国のゴールデングローブ賞と呼ばれる百想芸術大賞監督賞を受賞する快挙を果たし、アジア全域のアカデミー賞と言われるアジア・フィルム・アワードで新人監督賞に輝いた。

 

 

 

【受賞】

 

・41回青龍映画賞 主演男優賞(ユ・アイン)、新人監督賞(ホン・ウィジョン監督)、人気スター賞(ユ・アイン)

 

・第57回百想芸術大賞 監督賞(ホン・ウィジョン監督)、男性最優秀演技賞(ユ・アイン)

 

・ファンタジア国際映画賞 最優秀作品賞、主演男優賞(ユ・アイン)

 

・Cine21映画賞 最優秀俳優賞(ユ・アイン)

 

 

 

 

【あらすじ】

 

普段は鶏卵販売をしながらも、口のきけない青年テイン(ユ・アイン)と片足を引きずる相棒チャンボク(ユ・ジェミョン)は、、貧しさゆえに犯罪組織から死体処理などの裏稼業を請け負って生計を立てていた。

 

ある日、犯罪組織のヨンソクからの命令で、身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒ(ムン・スンア)を1日だけ預かることになる。

 

しかしヨンソクが組織に始末されてしまったことからトラブルが重なり、テインとチョヒの疑似家族のような奇妙な生活が始まるが、チョヒの親から身代金が支払われる気配はなく…

 

出会うはずのなかった者たちの巡り合わせが、韓国社会で生きる声なき人間たちの孤独を浮き彫りにする。

 

 

 

 

【感想】

 

この作品は、1月13日にシネマート新宿で先行上映が決まっていたので、ずっと観ようか悩んでいました。

仕事が定時で終わるなら間に合うかもと様子を見ていたのですが、予想通りというか夕方に急ぎの仕事が発生。

 

泣く泣く諦め、そのことをレッスンで先生に話したら、反応がイマイチでした。

 

かなり評判になっている作品のようなのに、なぜそんな反応なのかと理由を聞いたら「あの作品はお勧めするかしないかといわれたら、僕は後者です。」と言われました。

そして、「なぜかというと、自分にっては後味が悪い作品だったから。」とのこと。

 

 

あー、そうなんだ。

先生がそういう言い方をするって、暴力とか犯罪とか、そういうグロさとは違うグロさがある作品なのかな?
精神的に参っちゃうような…🤔

 

 

そんな話をきいてしまったので、ちょっと観るのをどうしようかためらったのですが…
それでもやっぱり気になる!

 

 

 

結局、ロードショー開始の1月21日翌日に観てきました!

 

極力事前情報は見ないで、先生からの「僕は’トガニ’を観た後みたいな気持ちになった」という感想も横に置いといて、この映画を観たのですが率直な感想は「観てよかった」です。

 

ただ、正直うまく感想がかけるか分かりません。

色んな思いがグルグルと浮かびあがってきて、自分の中でもいまだに整理できていない部分はあります。

 

 

とりあえず最初に言えるのは、約100分という短い時間の中にこれだけ韓国社会の縮図みたいなものを詰め込んで成立させていること自体がすごいなと。

新人監督でここまでの完成品を観る人達に突き付けることが出来るって、すごい。

 

ただ純粋に「すごいものを見せてもらったな。」という思いで「観てよかった」と思いました。(すごいしか言ってない…。ボキャブラリーの少なさよ😅)

 

 

 

というわけで、以下は極力ネタバレ内容に感じたことなど書いていきます。

 

あなたにとっての善悪とは?

 

あのポン・ジュノ監督が以下の公式コメントを出しているのですが、これを読むと「あぁ、まさに」と自分の整理のつかない心の一部をまとめてもらったような気持ちになりました。

 

 

善悪の境界がそもそも存在しないかのように、『声もなく』は我々の道徳感を麻痺させる。
延々と続く奇妙なユーモアにクスクスと笑っているうち、じわじわと忍び寄る悲しみと恐怖に、観客は驚がくする。

 

我々の人生は、実際にこういうものではないかと…改めて振り返るのである。

 

韓国のスーパースター、ユ・アインの驚きの変身と、共演者たちのすばらしいアンサンブルがホン・ウィジョンという新鋭監督の演出によって絶妙な調和を織りなす。
まれに見る力作だ。

 

ポン・ジュノ(映画監督)

 

 

本当にね、見ているうちに「善悪の境界線」が無くなっていく感覚になるのです。

行われている物事はどれもこれも凄惨なことのはずなのに、それが終始穏やかな雰囲気の中で日常的に繰り返されているからか、行っている人たちのある意味麻痺した感覚にこちら側も馴染んでいってしまうからか、不思議と違和感なくそれを受け入れている自分がいるのです。

 

そこには「貧しさゆえに」という免罪符のようなものが根底にあるからかもしれません。

本来ならどんな理由だとしても許されないはずの残忍な事件たちも、観ている人たちの無意識的な「だってしょうがないよね。こんな環境なんだもん。」という思によって許されてしまう。

 

自分のそれを例えとして出してみるなら、ストーリーが進むにつれ、犯罪を犯していると理解しつつも、「犯罪を犯している人たち」を「そういうことを生業としている人たち」に置き換えている自分がいました。

そういうこと生業としている人たちが、思いもよらないハプニングに巻き込まれドタバタとしているうちに、現実に引き戻された…みたいな。

 

しかも、最後の最後にその事に気づくのです。
「善悪の境界線が不確かになっている自分」に!

この「最後の最後に」というのが、何とも言えない複雑な気持ちを思い起こさせ、衝撃も何倍にも大きくしました。

 

だってラストを観たその瞬間も「テインはひどい目に遭った」、「こんなことになって彼はこれからどうなるのだろう?」と、彼のことを気にかけている自分がいるという事実!

 

日常的に犯罪をおかしていた悪党なら、ある意味仕方ないといえる結末であるにもかかわらず、そのラストに衝撃を受け、そんな思いを自然と持っている自分に衝撃を受け…と2度も衝撃を受けるのです。

 

本当に、すごい脚本とすごい役者たちとすごい演出や技術陣によるものすごい作品だと時間が経てば経つほど思い知らされる映画でした。

 

 

 

キャラクター、役者について

 

テイン(ユ・アイン)

 

この作品を観て改めて思ったのは「ユ・アインって本当に演技がうまいなぁ。」ということでした。

何を今さらって感じだけど、私だって前から分かっていたけど、有無を言わさぬ力で改めてそのことを納得させられた感じです。

 

もうね、「さすが」の一言でした。

 

口がきけない役なので演技はそうとう難しいだろうと思っていたけど、テインの感情がその細やかな動き一つ一つからしっかりと伝わってくる。

言葉に出来ないことへのいら立ちや、見知らぬ相手とのコミュニケーションでうまれる戸惑い

自分の感情に気付きながらもこれまでの経験通りに行動してしまう罪悪感、初めてといってもいいほどの家族に対する感情、などなど…

 

ユ・アイン本人がもともと口がきけなかったのではないかと思ってしまうくらいの自然体で、「声なき演技」に圧倒されました。

 

 

 

チャンボク(ユ・ジェミョン)

 

何にびっくりしたかって、この俳優さんは先日ご紹介した「ユンヒへ」の口下手で優しそうなお父さんと同一人物だってこと!

 

しかもこの後に「梨泰院クラス」の撮影をしているらしいのですが、どれもキャラクターが全く違う!

 

韓国の役者さんの実力の高さは知ってはいるけど…実際にこんな風に目の当たりにすると、やっぱりため息がでますね。

 

この作品の主演となるテインとチャンボクは、日常的に犯罪を手伝いながら、それがまるでサラリーマンとかわりないように真面目に誠実に仕事に取り組んでいます。

特にチャンボクという人物は、いかにも人間臭い部分もありつつ善悪の感覚が私とは違う部分があり、だからこそ笑いを誘われたり状況を客観視できるのに一役買ってくれたキャラクターでした。

変に生真面目なところが合ったかと思うと、テインに面倒ごとをおしつけるようなところがあったりと、その絶妙なバランスがすごく自然に見えるように演じているユ・ジョンミンさんは「さすがだなぁ」と感じずにはいられない役者さんでした。

 

 

 

チョヒ(ムン・スンア)

 

個人的には初めて知った子役さんなので、ご本人のことは情報ないままで彼女の役柄をみていましたが…。

 

とにかくこのチョヒという少女が年齢と比較しても並外れた状況把握能力にたけているのに驚きました。

自分の置かれた状況を的確に理解し、誰の信頼をどういう形で得られれば自分はより生存率が高くなるのかということを考え実行に移すことができる。

そして、その中に少女らしい幼さもしっかりと持っている。

ストーリーが進むにつれて変わっていくチョヒの複雑で理解しにくい心情を細かく表現し、観ている側も彼女に対してまるで心が通じたかのように思った矢先…。

私は完全に彼女の演技に振り回されました。

犯罪者たちに命を握られつつも彼らと慣れ親しんでいくという難しい心の動きを、ここまで繊細に演じられるとは…!

 

ムン・スンアちゃんは2009年生まれのなのですが、彼女は2019年に映画デビューした『Scattered Night』で両親が離婚した10歳の少女役で複雑な感情を表現し、第20回全州国際映画祭で演技賞を受賞しています。

 

本作のオーディションでもわずか3ページの台本から自分のキャラクターを分析し、ホン・ウィジョン監督に「彼女のキャラクターと状況を理解する能力は並外れていた」と語らせています。

 

そのクレバーさが今回の役にリンクしていて、末恐ろしいとさえ感じるくらい将来が楽しみな役者さんです。

 

 

 

ムンジュ(イ・ガウン)

テインの妹役で登場するイ・ガウンちゃんは、ある意味ムン・スンアちゃん以上に自然体で彼女もまた将来が楽しみだと感じずにはいられませんでした。

 

テインに抱き着くしぐさや甘えるしぐさ、ぐちゃぐちゃの家の中でただ日々を生きている彼女の様子、その無邪気さやしぐさの自然さがずば抜けています。

彼女の演技があまりに自然なので、ユ・アインさんの演技がさらに光っているように感じました。

 

この2人の女の子たちは、「命」に対する貪欲さはどちらももっているけれど、「動と静」というくらい対局にあるようにも感じました。
まぁ、立場の違いからそれは仕方ないとは思うけど。

 

 

 

その他、登場する人物がみんな強烈なキャラクターなのですが、そのキャラクターを皆さんうまーいこと演じられています。

この辺は「さすが韓国!」と思ってしまう演技力の層の厚みじゃないでしょうか。

層が厚いだけじゃなくて、濃く深く幅広い感じ。

ユ・アインさんの神がかった演技力はもちろんですが、それぞれのキャラクターにも感情を揺さぶられました。

既に韓国で押しも押されぬ大スターのユ・アインさんが、次世代の才能とうたわれる監督とタッグを組み、さらにこれほどの役者陣も参加してくれたことも、私は素晴らしいなぁと感じました。

なんというか、韓国の映画を作る熱の強さに羨ましくも感じたのです。

 

 

 

 

まとめ

口がきけないテインが主役なので「伝わらなさ」に対して勘違いしそうですが、これはあくまで象徴的な人物としてそうであったのではないかとふと思いました。

 

「貧しいもの、弱い者の声は届かぬ」という象徴として、あえて彼は口がきけなかったのではないかと。

 

例えテインが口をきけたとしても、彼の声は届かないのかもしれない。

そう思うと、ますます現実にぞっとしました。

 

一部を切り離してみれば束の間の疑似家族としての幸せな日々と、現実には命をかけた異様な関係性を取り繕う日々と、その差が大きすぎて冷静に考えれば考えるほど消化できない不安が渦巻きました。

「たら」、「れば」を考えずにはいられないが、考えれば考えるほど現実に気持ちが暗くなるというか。

 

 

物語の途中で感じる不安と最後のあたりで感じる不安の質というか重さが違いすぎて、それにも試みだされました。

多分、それは技術的な部分も素晴らしかったからだと思います。

 

 

また、個人的に印象的だったのは色彩について。

殺害現場から落ちていく血が妙に鮮やかで、それをまるで絵の具のようにつかうチョヒになぜか笑ってしまったり。

ティンとチョヒが打ち解けていくにつれ現れる美しい夕日が印象的だったり。

たぶんチョヒが何かを強く決心した瞬間の夜なのに妙に明るいシーンに心惹かれたり。

逆にラストではほどんど色彩がなくなっていて悲しさが余計に募ったり。

細かな色彩の演出にも、知らず知らずのうちに心がつかまれていたようです。

 

 

 

 

上でも少し触れましたが、この作品は一見「誘拐事件の発生から解決まで」を追っているようで、わずか100分という短さの中で「死体処理」、「誘拐」、「人身売買」、「各社社会」、「男尊女卑」などなど様々な問題がちりばめられていて、なかなかの闇の深さを描いた作品です。

 

そんな数々の問題を、「あくまでも映画の世界」、つまりは「自分とは違う世界」と思って観ていると、最後の最後にとんでもない恐怖となんともいえない悲しさを突き付けられる作品でした。

 

登場人物たちそれぞれが持つ「善悪の基準」、そしてこの作品を観た人それぞれで異なる「善悪の基準」を問うているというのが、この作品の核でもあり、監督のメッセージではないでしょうか。

 

 

本作は、いろんな意味で好みが分かれる作品かもしれません。

人によっては嫌な思いだけが残る作品かもしれません。

それでも、一度は観てほしい。

観終わったときどう感じたのか、自分で自分の心に聞いてみてほしい。

私はそんな風に感じた作品でした。

 

 

いつも以上に上手くまとめられず申し訳ない。
他にも伝えたいことがあるけど言葉で上手くまとまりません。

 

何はともあれ、興味を持った人は是非映画館へ!

 

 

 

最後に、他にも心に刺さった公式コメントをいくつかご紹介しておきます。

 

悪しき者の善意は報われない。
所詮それは、悪しき物事の土台の上に乗っかった善意でしかないからだ。
ならば、悪しき土台を打ち砕くほどの善意であれば適うのだろうか?
そんな“声なき”灰色の善悪論と不条理が、我々の胸を締め付ける。

松崎健夫(映画評論家)

 

ここに確かに存在しているはずなのに。
まるでいないかのように過ごす日々はどんなに苦しいか。
声を上げることもできず、この行き場のない想いをどうしたらいい。
寂しさと希望と絶望と光が何度も交錯していた。
私たちは決して1人で生きることはできない。

枝優花(映画監督•写真家)

 

 

【ネタバレ覚悟】※ラストを知りたくない人はここでストップ!

 

いや、そもそもすでに結構ネタバレしてる気もしますが…😅

 

映画を観た後に買ったパンフレットに、監督のインタビューなど沢山出ていたので、興味のあるかたはご覧ください。

※個人的には作品を観た後のプラスαとして見るのがお勧めです!

 

 

 

では、長くなりましたが今回はここまで!

 

 

今日も見てくださって、ありがとうございます!

また次回の更新でお会いしましょう

 

 

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