「待つ」ってことを楽しみたくなる雨のようにじんわり沁みる甘酸っぱい物語
안녕하세요?
oulmoon입니다.
今日はお正月にみた韓国映画第二弾のご紹介です。
先日、韓国映画「ただ悪より救いたまえ」についてご紹介しましたが、それを観た同日に続けて観た作品です。
細かい事前情報はなかったけど、どう考えても「ただ悪より救いたまえ」はショッキングな映像( = 残虐な映像)が多そうな予感がしていた私。
正月2日の昼間から重い気持ちを引きづりたくない…という思いから、「ただ悪より」の予告編が流れている最中に慌てて次の時間に上映される「雨とあなたの物語」を予約しました。
一応フォローすると、おとなしい作品なら何でもよかったってわけではございませんよ。
カン・ハヌルさん主演の青春映画なんて聞いたら、そりゃ惹かれちゃいますよ。
しかもそのお相手が大好きなチョン・ウヒさんですもん。
せっかくだからということで二本連続で観ましたが、こちらも素敵な作品でした!
韓国映画「雨とあなたの物語」
(以外、すべての画像元)https://movie.daum.net/moviedb/main?movieId=139825
原題:비와 당신의 이야기
韓国公開日:2021年4月28日
日本公開日:2021年12月17日
ジャンル:ドラマ、ラブストーリー、ロマンス
監督:チョ・ジンモ
キャスト:カン・ハヌル、チョン・ウヒ、カン・ソラ(特別出演)
上映時間:117分
韓国観客数:401,193(韓国)
▼参考にどうぞ
【概要】
まだスマートフォンもSNSもなかった時代の韓国で、偶然届けられた一通の手紙から互いの人生の慰めとなる男女のラブストーリー。
それぞれの時間をそれぞれの場所で過ごしながらも、待ち望んだ手紙を読む2人の姿は、大切な人からの連絡を心待ちした時代を想起させ、時を経ても記憶に残る普遍的で愛しい日々の様子が描かれている。
主人公の冴えない予備校生ヨンホを演じるのは、様々な青春の自画像を描き、今作が4年振りのスクリーン復帰作となるカン・ハヌル。
日本でもリメイクされ話題を呼んだ映画「ミッドナイト・ランナー」でパク・ソジュンとW主演、2019年には韓国の『ゴールデン・グローブ賞』と謳われる第56回百想芸術大賞で「愛の不時着」や「梨泰院クラス」を抑えTV部門の大賞を受賞した人気ドラマ「椿の花咲く頃」に主演し、その存在感はアジア中で急上昇している。
病床の姉を支えながら母とともに古書店を営むソヒ役には、『サニー 永遠の仲間たち』で強烈な印象を残したチョン・ウヒ。
その圧倒的な演技力で、『ビューティー・インサイド』、『哭声/コクソン』など注目作への出演が続く。
さらにヨンホの予備校の友人・スジン役は『サニー 永遠の仲間たち』、「ミセン-未生-」でチョン・ウヒ、カン・ハヌルとの共演経験を持つカン・ソラが演じる。
監督は初の長編映画「怪しい顧客たち」で一躍脚光を浴びたチョ・ジンモ。
本作では、青春の記憶を持つすべての人に懐かしさを届け、文通から生まれた「待つ」という人生の過ごし方によって多くの人に深い癒しとう共感を与えている。
【あらすじ】
携帯電話が普及し始めたばかりの2003年、韓国。
はっきりとした夢も目標もなく、ソウルで退屈な浪人生活を送るヨンホ(カン・ハヌル)は、長い間大切にしてきた記憶の中の友人を思い出し、手紙を出してみた。
一方、釜山では、自分の夢を見つけられないまま母親と一緒に古書店を営むソヒ(チョン・ウヒ)が、姉のソヨン宛に届いたヨンホからの手紙を受け取る。
ソヒは病気の姉に代わって返事を書き、その後も二人は、ソヒの出した“質問しない”、“会いたいと言わない”、そして“会いに来ない”という「約束」を条件に手紙をつないでいく。
偶然始まった手紙のやり取りから、モノクロだった2人の日常は次第に鮮やかに彩り始め、やがてヨンホは一つの提案をする。
「もしも12月31日に雨が降ったら会おう。」
叶う可能性が限りなく低いこの提案は、果たして叶えられるのか…。
【感想】
主題に関する感想は後程で書くとして、私はいわゆる「韓流ドラマ」によく出てくる「社会的価値観」がすごく苦手です。
たいていの作品は最終的には感動したり好感を持って見終わるのだけど、特に家族ドラマとか恋愛ドラマででてくる韓国の「こうであるべき」という価値観を見ていると苦しくなるからです。
最近は韓国も社会的風潮が変わってきているので、その「価値観」に登場人物が疑問を感じたりもがいている様子も多々見受けられますが、それも含めて「こんな環境だったら嫌だなぁ。」と感じることが多いのです。
年頃の男女が主役のラブストーリーなんかだと、それは就職とか結婚とか人生の価値観にもろに出ていて、余計に息苦しくなります。
そもそも儒教の国なので、日本とは文化の違いもあると思います。
でもこれ、一昔前の日本でもこういう流れがあって少しずつ変わってきたんだろうなと。
だからこそ、一昔前にあっためんどくささみたいなものを今頃韓国ドラマで再度見ると超ネガティブに感じとっちゃうのかなと。
韓国でも、最近の若い世代はその辺りに違和感を感じて声に出している人が増えているのだと思いますが。
(韓国ドラマ「よくおごってくれる綺麗なおねえさん」なんか チョン・ヘイン ·さんやソン・イェジンさんの状況とか、「まさに!」という感じでした。)
で、ようやく本作について。
ラブストーリーなので、上で書いたその辺りの苦手な部分はそれなりに出てくるだろうなと思いつつ…
それでも主演がこの二人なら、そういう部分への嫌悪感を繊細な演技でカバーしてくれるんじゃないかと思って観ることにしました。
ストーリーについて
案の定、話が展開していく中で「あー、でた、でた!」と思うシーンはいくつかありましたが、その際のヨンホ(カン・ハヌル)の反応が良かったです。
厳しい韓国社会と闘うために必要なものは何も持っていない若者特有の諦め感を出しつつも、やっぱり完全には自分の人生を否定したくない青臭さ。
一方のソヒ(チョン・ウヒ)も、先の見えない毎日をただ過ごしている感じと、それでいて心の奥では何かを求めているような…。
窮屈な社会を生きる若者そのままを表現していて、静かにそのもどかしさを感じさせてすごいなと自然と感じました。
心の底からワクワクするようなことも、叶えたい夢もない。
焦りや不安を感じながらも今に流され漠然と生きている二人。
そんな2人が偶然のきっかけから手紙をやりとりするようになることで、それぞれにゆっくりと変化が起き始めます。
手紙を書いている間はもちろん、送った瞬間、返事を待つ間もこころはどこか相手のことを考えている。
SNSとは違い、書くのも待つのも手間や時間のかかる手紙。
でもむしろそれだけ気持ちを時間を注ぐことで手紙一通の存在の重さがどんどん重くなっていく。
自分にも経験があるので分かってはいたものの、その時間の過ごし方というか、その時間に降り積もる相手への思いの強さに改めて「あー、手紙をやりとりするって、こんなにも相手の時間と心をいただくものだったんだなぁ」と思い出しました。
これって、今の時代(=携帯電話などが当たり前になった時代)にはほとんど失われてしまったものですね。
そして、同じようにふた昔くらい前までは手紙と同じようにこうして相手と自分の時間をつないでいたものが沢山ありました。
携帯電話がないころの家電や公衆電話をつかってやりとりした時間。
携帯電話がないころの待ち合わせの時間。
確かにめんどくさかったし効率悪かったけど、だからこそのミラクルが起こる可能性があったあの頃。
あの時代を経験した人なら、思い出すと妙に当時の自分が馬鹿らしくいじらしくかわいらしく感じるその感覚をこの映画で呼び起こされると思います。
ネタバレになるから細かいことはかけないけど、そういうこそばゆい青春時代の感覚をそこかしこで感じられる作品でした。
登場人物(役者)たちについて
【悩み多き若者を演じさせたらピカ一のカン・ハヌル(ヨンホ)】
冴えない予備校生のヨンホ。
2浪してもソウルの大学に通える見込みがない彼ですが、これといった夢もなく日々を過ごしています。
大人たちのいうことに内心腹を立てながらも、どこか自分のことをあきらめているように見える彼。
なんとなく奥手に見えた彼なのですが、思いもよらないところではひょいっと行動力を出すシーンがそこかしこにあります。
また、ソヨンと連絡を取るようになることで自分のやりたいことを少しずつ見つけていく彼。
その繊細なキャラクターと「待つ」ことで生まれ彼の中の変化を、カン・ハヌルさんがとても細やかに表現していてとても素敵でした。
インタビューで「ヨンホには悩みが多い最近の若者の普遍的な姿を投影させた」といっていたカン・ハヌルさん。
その通り、人間味溢れる演技で誰もが共感しやすい青春の姿を演じています。
もともと俳優として沢山の魅力の持ち主とは分かっていても、本作でも素敵だなと改めて思いました。
正直、いわゆる「美男子」とは違う気がするけど、彼の表情や声、そして内から表現される演技力を見ていると、ついつい引き込まれます。
ほんと、誠実とか奥手な青年がぴったりな役者さんですよね。
【作品ごとにその演技力を見せつける名女優チョン・ウヒ(ソヒ)】
姉を助けながら、淡々と家業を徹出すソヨン。
彼女も一見自立しているように見えるけど、すごく複雑な感情を持っていそうなキャラクターでした。
優秀で大学でもよく知られていた姉に比べ、これといったとりえもない彼女。
それでいてというか、そのせいでというか、姉が病気になってからは彼女の世話にお店の手伝いにと日々忙しそう。
姉のことを大切にしているのもよくわかるし、でも毎日お世話に行く様子や、やりたいことがないからなのか本は好きだからなのか手伝っている古本屋での過ごし方から、彼女のモヤモヤした思いが伝わってくるようでした。
うまく言えないけど、ふとした瞬間に「彼女のその気持ち、わかる気がするな」と感じました。
やりたいこともない日々のつまらなさ、他にやる人がいないからやるしかない日々の仕事、年だけ取っていく毎日。
その日々のやるせない感じと、ヨンホ同様に手紙のやりとりから少しずつ変わっていく彼女の様子をチョン・ウヒさんはナチュラルに表現していました。
本作では、「これまでに演じたキャラクターとは違い、日常的な部分を演じるところが興味深く魅力的だった」とインタビューで答えていたチョン・ウヒさん。
彼女が出演している映画はいくつか見ているけど、その透明感と清らかさは本当に素敵です。
前から書いていますが、私が彼女を意識するようになったのは「ビューティー・インサイド」から。
役柄上、凛とした美しさとぎこちなさが印象的でしたが、凛としたかっこよさって、彼女のイメージそのままな気がします。
【その演技力と存在感で輝きを放つカン・ソラ(スジン)】
自由奔放で強いけど少女のようなかわいらしさと繊細さで、ある意味一番存在感があったスジン。
ヨンホの同級生として初めの方から登場したスジンは、やりたいことは気負いせずにどんどんやってしまうその姿から、一見ソヨンとは正反対のように見えます。
でもそんな彼女にも彼女を彼女たらしめる過去が合ったり、意外に相手のことを考えて行動していたり。
そんな絶妙なキャラクターをカン・ソラさんがまっすぐに演じていて好感が持てました。
いや、正直言うと最初はスジンのキャラクターは苦手でした。
主役二人にどんな影響を与えるのかとつい気になっちゃって。
でも時間とともにその気持ちを変えさせ、スジンに愛情さえ感じるほどなっていたので、演じていたカン・ソラさんは「さすが」と思わずにはいられませんでした。
他にもね、ヨンホのお兄さんとか、ソヨンのお母さんやソヨンの幼馴染、その他何かと考えさせられるキャラクターが沢山登場します。
そのたびに気持ちが揺さぶられたり共感したり、不快に感じたり。
皆さん、宛り前だけどやはり上手いんですね。
展開はそんなに大きく変わらないように感じるのに、「待つ」ことで生まれる時間やそれぞれのキャラクターがもつ「価値観」で色んなことを感じたり考えさせられました。
基本的に、韓国では旬の見た目だけで人気のある役者を主役に使うことが少ないのは好きです。
この作品のように、主役も助役も外見以上に実力を備えている人たちが優秀なスタッフと一丸となって作っているから、色んな感情を沸き上がらせることができるんだろうな。
そういう点は、日本はまだ韓国より「骨太さ」が足りないように感じます。
▲ヨンホの兄役のイム・ジェファンさん
前半と後半の違いも面白かった
▲ヨンホの父役のイ・ヤンヒさん
職人気質だけど、チャーミングでした。
▲ブックワーム役のカン・ヨンソクさん
彼の生きざまにも未来を感じました。
▲ソヒの母役のイ・ハンナさん
セリフに疑問を感じるところもあったけど、結局自分らしさを貫く強さは現代的です。
▲ソヨン役のイ・ソルさん
複雑な気持ちになる役柄でした。
まとめ?
この作品は、まさしく「待つ」ことを選択した主人公と「雨」のお話。
さらに言うと、「待つ」と「雨」というテーマとじっくりと向き合うお話。
雨にしろ待つ行為にしろ、「うっとおしい」「めんどくさい」と思っている人にはこの作品にちりばめられているささやかな願いや喜びに心動かされることはないかもしれません。
いや、そんな人ももしかしたら「たまにはいいかも」と思わせてくれるかもしれません。
ちなみに、姉宛に届いた手紙に妹が返事することで文通が始まってしまう設定から、岩井俊二監督の「ラストレター」を連想する人もいるかもしれないけど、本作はそれよりもしかけが多い感じです。
8年間の文通や各々の出来事が前後して組み込まれてくるので、最初は分かりにくい部分もあるかもしれませんが、最終的にはちゃんと回収してくれます。
ゆったりした感じで話が展開するので序盤は退屈に感じることもあるかもしれないけど、お姉さんのことを思うとずーっと心に引っ掛かっていたなにかがラストで解消されるのはもちろん、スジンとのオーロラの話とか、色々色々…「はっ!」とさせられることが多かったです。
本当最後の最後まで巧妙に組んだなあと感心した。
そうそう!
文通というのがメインテーマなだけあって言葉が綺麗なところもお勧めです。
また、時にシビアに家族との関わりや社会写し出しているので、単なるラブストーリーで終わっていないところもお勧め。
それに加えて、この作品は外国人からしたら当時の韓国や今の韓国を知るのにもいいと思います。
日本よりずっと厳しい受験戦争。(大学受験もあるし、公務員受験もある)
いい大学に入っていい企業に就職しないと、もしくは公務員きならないと勝ち組になれないという思想。
受験に失敗したら人生は終わりだという恐怖感。
そんな戦いのなかで疲弊し、中には自殺を選ぶこともある若者たち。
一流大学に入って一流企業に入りさえすれば人生を約束されたかのような錯覚を起こす大人たち。
持ち家、マイカーありの条件で結婚し、家庭を持って初めて一人前だと言われる社会。
じゃあ、「成功者」の条件を満たしていない多くの人たちは幸せではないの?
そんなはずないでしょう?
でも昔から続く呪縛は今も社会に根付き、若い世代になればなるほど違和感を感じています。
「幸せって何なのか?」
「自分は何のためにこの世に生まれてきたのか?」
そういう意味でも、この作品は色々と考えさせてくれるのではないでしょうか。
他にももっと軽い「韓国らしさ」の描写でいうと、「小学校のチーム分けは紅白ではなく青白」とこ、「大晦日に雨が降るのは確率が低いというわけではなく、日本と北緯が違うから降るなら雨ではなく雪になってしまう」なんてのもありましたけどね。
色々書きましたが、全体的にはゆったりと心穏やかになれる作品ではないでしょうか。
そして絶対に最後の最後まで観てほしいラスト。
この映画は、作品タイトルとエンドクレジットが始まっても、絶対に席を立ったないでくださいね。(おうちで観る人も、終わりきるまで取り出さないで!)
最後の「アレ」を観ると観ないとでは全く別物になるから!
今ならまだ映画館で観れる人も多いかな?(2022.1月現在)
興味を持ったかたは、ぜひ!
おまけ▼パンフレットに挟まれていたソヨン宛のヨンホからの手紙
では、長くなりましたが今回はここまで!
今日も見てくださって、ありがとうございます!
また次回の更新でお会いしましょう