「チェイサー」「悲しき獣」の脚本家が描く、壮絶なノワール・アクションの傑作!
안녕하세요?
oulmoon입니다.
今回は、お正月にみた韓国映画のご紹介です。
これは2021年最後のレッスンの日、先生と雑談していてお勧めされた作品でした。
前に本国でニュースになってた時に、「これは面白しでしょ」と思いつつ、忙しすぎてすっかり忘れていたのです。
先生も「今新宿でやってるし、ぜひ見てほしい!」とのことだったので、早速1月2日にシネマート新宿で予約しちゃいました。
とりあえず一言!
「観てよかった~!!」
韓国映画「ただ悪より救いたまえ」
(以外、すべての画像元)https://movie.daum.net/moviedb/contents?movieId=127897
原題:다만 악에서 구하소서
韓国公開日:2021年8月5日 / ファイナルカット版:2021年10月28日
日本公開日:2021年12月24日
ジャンル:韓国ノワール、ノワール・アクション
監督:ホン・チャンウン
キャスト:ファン・ジョンミン、イ・ジョンジェ、パク・ジョンミン、チェ・ヒソ、オ・デファン、豊原功補、白竜他
上映時間:108分(ファイナルカット版:114分)
韓国観客数:4,357,803人 / 37,961人(ファイナルカット版)
年齢制限:PG-12
▼参考にどうぞ
【概要】
韓国ノワールの名手が新たに、壮絶な韓国ノワール・アクションを世に解き放った!
本国で463万人を動員した「新しき世界」のファン・ジョンミンとイ・ジョンジェが7年ぶりに共演した話題作。
主人公で祖国から見捨てられた凄腕の暗殺者インナムを名優ファン・ジョンミンが、インナムの命を執拗に狙う無慈悲な殺し屋レイを名実共に人気のイ・ジョンジェ演じている。
「新しき世界」で義兄弟役だった二大スターが、本作では憎み合う殺し屋同士としてぶつかりあう姿は必見!
さらに、バンコクでインナムを手助けするトランジェスターのユイをパク・ジョンミンが好演し、豊原功補や白竜ら日本人キャストが短いながらもヤクザの裏社会を体現している。
本作が長編第二作となるホン・ウォンチャン監督は、『チェイサー』『哀しき獣』の脚本を務め、韓国ノワールの革新を牽引してきた才能あふれる人物。
主人公たちの複雑な感情の交差を、狂気と暴力とアクション、時にはセンチメンタルさなども織りまぜながら独自の美学を持って表現している。
撮影監督は第92回アカデミー作品賞受賞作「パラサイト 半地下の家族」のホン・ギョンピョ。
彼もまた、東京、仁川、バンコクという3つの舞台の個性を十分に増幅させ、その幻想的な映像手法で最後まで観客を魅了している。
【あらすじ】
腕利きの暗殺者インナムは、引退前の最後の仕事として日本のヤクザ・コレエダを殺した。
今後は悠々自適にパナマで隠居生活をと考えていたインナムだったが、元恋人がバンコクで何者かに殺され、別れた直後に生まれていたインナムの娘も誘拐されたとの知らせを聞く。
初めて娘の存在を知ったインナムは、バンコクへ急行し誘拐に関わった者を次々と拷問にかけて娘の居所を突き止める。
一方、兄であるコレエダを殺された冷酷な殺し屋レイも、復讐のためインナムを追い、インナムに関わった者たちを次々と手にかけていく。
ついにバンコクまで追ってきたレイと、娘を救うために犯人を追うインナム。
2人の通る道には死体が積みあがり、やがてタイの犯罪組織や警察まで巻き込み壮大な抗争へと発展していく。
果たして、暴走する暗殺者と狂暴な殺し屋の運命の対決の結末は?!
絶対に出会ってはいけないはずだった2人の男の暴走は、どちらかの息の根が止まるまで終わらない―
【感想】
冒頭にも書きましたが、「観てよかった~!!」と素直に思えた作品でした。
正直、韓国ノワールってものによっては本当に気持ちが落ちちゃうので、正月早々これもそうだったら嫌だなと不安もありました。
多分人もガンガン殺されると思うし。
だから見る前日はジャンル以外はほとんど情報をいれないで就寝。
翌日は、朝一の回だったのに寝坊して大慌て!
9時45分くらいの回だったのに、起きたのが9時15分!!
「これは無理かも…。次の回を予約しなおすかな?」と思いつつ、とりあえず5分で準備して電車に乗り、映画館についたら余裕で間に合いました。
やれやれ~😥
でもこの大慌てのお陰で、必要以上にビビらず作品に入ることができました。
それもあってか是非とも多くの人にありのままに観ていただきたい!
というわけで、極力ネタバレ内容に感じたことなど書いていきます。
ストーリーについて
ストーリー的には新しくはないんですよね。
生き別れた娘の救出とか、血縁関係に関係ない大切な存在への愛情とか、殺された兄の復讐とか、人身売買や臓器売買のための誘拐などなど…。
韓国に限らず、ノワール映画などで見たことあるような内容がいくつか積み重ねられている印象でした。
それでも、それぞれどこかでみたことあるような…と思うような設定でも、面白いのです。
あくまで推測ですが、大元は過去にみたような設定ばかりでも、予想外のことが重なって上手くストーリーがかみ合うようなストーリーラインになっているからだと思います。
色んな事が偶然が重なり、さらに先々で化学反応を起こすことでどんどん面白くなっていく。
それまでの問題が落ち着いたと思いきや、また随所でハプニングが起こり、全編かけて追いかけっこを繰り返すのでハラハラドキドキとにかく面白いのです。
しかも、それをやっているのがあのお二人ですからね。
韓国映画らしい男同士の血なまぐさく激しいバイオレンスアクションを十分に楽しめる作品だと思います。
言わずもがなですが、拷問や殺人シーンでの残虐さは「さすが韓国!」と思わずにはいられませんよ。
インナム自身が殺した人も含めて、インナムに関わった人達があまりにも殺されすぎてさすがに驚きました😅
ファン・ジョンミンさんとイ・ジョンジェさんの身体能力の高さにも驚きです。
(でもお二人に限らずですが、韓国のアクションシーンが日本より骨太なのはやっぱり「徴兵制度」 に関係しているのではと思ってしまう。
いい意味で平和ボケしている日本と、戦うために肉体を鍛えたり実践を行う必要のある韓国とでは、やはりその辺の深さが現れてしまう気がします。)
また、貧困社会で起きている問題なども描かれていて、「その世界の日常」をリアルに感じられるのも複雑な気持ちになりました。
こういう部分も、さすが韓国映画と思える作品です。
登場人物(役者)たちについて
【韓国を代表する名役者ファン・ジョンミン】
間抜けな役からシリアスな役までこなせる彼ですが、今回の役柄も良かったですね。
感情を捨てたかのように淡々と人を殺す職人のような暗殺者だった男が、生まれて初めてといっていいほど守りたい人が出来た不器用な父親の顔になっていく様子をとても自然に演じられています。
娘の存在を知ってから、徐々に彼の人間性が見えだし、加速的にそれが絞り出されていく感じもとても良かった。
最初は淡々と人を拷問かけたり殺していくので余計に効果的でしたね。
レイがクレイジー過ぎて目立ちませんが、娘の居所を聞くための拷問とはいえ、躊躇無さすぎてすごい。
だからこその娘への愛を感じますけども。
最近は「ん?」と思うような作品もありましたが、この作品で改めて好きな役者さんだなぁと思いました。
【狂気さえも美しく演じられる名役者イ・ジョンジェ】
ファン・ジョンミンさんが「手段のためにザクザクと人の指を落としていく静かなる狂気」ならば、こちらは「陽気と陰鬱を併せ持つ理解不能な狂気」で目が離せません。
もともと「狂気」ってそれ自体は理解できなくても、そこまで行く工程にある程度の理解は出来るもの。
でも彼の場合は違います。
映画のなかでも出てきますが「なぜそこまで」と皆がいうほどの狂いっぷり。
後半でその理由に本人がふれますが、とにかくクレイジーです。
オジンオゲームとは全く別人の、毒蛇のようにどこまでも追いかけてくる姿を見るたびにヒヤヒヤしました。
特に恐ろしいのが、床を汚すのが嫌なのかホテルでもどこでも床にビニールを敷くところ。
逆にどれだけ血を流す気なんだと…。
その狂いっぷり、いやー、とにかく最後まで「アッパレ!」の一言です。
▲カメラが回ってないときのイ・ジョンジェさんの顔つきが全く違うのも、余計にスゴさを感じます
【若き天才!名脇役のパク・ジョンミン】
主演のお二人がそれぞれ大絶賛だったパク・ジョンミンさん。
彼が登場するのは先生から聞いていましたが、最初の登場は「まさか、これが彼?!」と驚きました。
だって素直にきれいだなって思ったから。
彼は今回はトランスジェンダー役だったのですが、もともとそうなのではと思うほど素晴らしい!
キャラクターの研究をとことんされたんだろうなと。
彼の脚本と演技に対する誠実さを見せてもらった気がしました。
ある意味、この作品のなかで一番光っていたと私は思います。
監督はこの作品のなかで重要な役割を果たす人物にトランスジェンダーをあてたのは「観光客からみたバンコクの目線の一つにトランスジェンダーのショーがあると思ったから」といわれていました。
「インナムという男らしい男性と女性の面を持ったトランスジェンダーのイメージが合わさったら面白いシナジーが生まれると思った」と。
パク・ジョンミンさんは、それを完璧に果たしていたと思います。
その他、「パラサイト」では怪演で強烈なインパクトを残したパク・ミンョンフンさんや大御所ソン・ヨンチャンさん、オ・デファンさんなど、助演の皆さんはよく見る顔がちらほら。
▲パク・ミョンフンさん
その他
アクションシーンは途中独特な手法が使われていて、カメラワークとか表現とか人によっては好みがわかれるかもしれません。
私はその辺は「独特だな」くらいでしたが、効果音が大きかったので、「ここまでビシバシ音をつけるのか」と思いました。
むしろそれが残酷さを半減させて助かったんですけどね。
終盤に行けば行くほどアクションの激しさがましてキャラクター別の戦い方が楽しめるのですが、仁義の関係も含めたそれぞれが「信じるもの」への対立が活きています。
主役2人それぞれ抱いているバックボーンがはっきりしているので、余計にそれが活きるのでしょう。
それにしても、タイでの対立シーンはものすごいド派手で「こんなんして大丈夫なのか?!」と不安になるほどでした。
タイの裏社会を牛耳るドンや警察を巻き込んでの銃撃戦など迫力ありすぎ!
これが出来てしまう撮影監督、さすがです。
ホン・ウォンチャン監督もインタビューの中で「瞬間的に人物の表情をとらえる、動物的な感覚を持っている監督です。海外ロケに多くの制作費がかかった作品だったので、ホン・ギョンピョ監督の経験とノウハウが大きな役割を果たしてくれました。」と評価されていました。
最後に
最初は、次々と立ち上がった序章から、「こんなのどうやってまとめるの?」と思いながら観ていましたが、次第にピントが絞られていき、実はとてもシンプルな動線なんだと観客に気づかせていく流れは本当に素晴らしいです。
ファン・ジョンミンさんとイ・ジョンジェさんは息ピッタリのナイスタッグだったし、パク・ジョンミンさんをはじめ、名脇役たちがストーリーに幅と深みを与え、時間を忘れるほどの面白さでした。
個人的には、序盤は東京が舞台なのも嬉しかったです。
▲笹塚の「中華そば福寿」でのワンシーン
「あー、こんな感じの店あるある!」と。
(渋谷区笹塚のラーメン屋とか、新宿山吹町にある居酒屋、墨田区横綱にある食堂や千葉県長生郡にある料亭などで撮影されてので、ロケ地回りをするのも楽しそう!)
ゲストの豊原功補さんと白竜さんは出演は短かったけどインパクトある役で良かったです。
白竜さんはもう少し出ても良かった気もしますが、キャスティングなど色々込み合った事情もあるんでしょうね。
少しだけど、豊原さんが韓国語を離すのもテンションあがりました。
逆に主演のお二人が日本語を普通に離していたのも嬉しかったな。
面識はない娘を何をしてでも逃がそうとするストーリーは、少し役は違うけど「レオン」を思い出しました。
韓国ノワール(韓国アクション)として、最近では頭ひとつ抜けている作品だと思います。
他にも伝えたいことが山ほどあるけど…
何はともあれ、興味を持った人はぜひ!
「大衆割烹すみれ」でのワンシーン
では、今回はここまで!
今日も見てくださって、ありがとうございます!
また次回の更新でお会いしましょう